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有価証券報告書の読み方 企業の貴重なデータが満載!

有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)と聞くとお堅い名前の為、敬遠する人は多いと思います。漢字ばかり・・・

でも株式投資をしている人であれば、これほど詳細に企業の現状について知れるものはなかなか無く貴重なデータが詰まっています。

企業の内情を知るのにこれ程適したデータはありません。投資は勿論、就職活動・転職活動の際にも企業を知るのにとても役に立ちます。

ぼくは仕事柄、企業の財務分析も行う事も多く、上場企業のお客さん相手の場合は訪問前に必ずチェックするし、よく見ています。

今回は有価証券報告書はどういったもので、どこを読むといいのかについてポイントを纏めてみたいと思います。

今回はユニクロで有名なファーストリテイリングの2020年8月決算を題材に読んでいきたいと思います。

yuho202008.pdf (fastretailing.com)

有価証券報告書って何?

そもそも何処で見れるの?

企業のHPは勿論見ることできますが、おすすめは「EDINET」というサイト。企業名で検索し直ぐに見つけることができます。

EDINET (edinet-fsa.go.jp)

決算短信とどう違うの?

決算短信(けっさんたんしん)の方が見慣れている方多いかもしれません。決算発表時に公開される決算情報が決算短信。決算日から45日以内に公開と定められています。速報性がより重視されています。

一方、有価証券報告書は決算日から90日以内と決算短信より期間が長く、より内容の詳しさが重視されています。

決算短信は30ページ程度が多いですが、有価証券報告書は100ページを優に超えるのが殆ど。最初躊躇しますが、読み慣れたら重要点を見ればいいので意外と簡単に読めてしまいます。何より読んでいると面白い!

では早速見ていきましょう

1. 企業の概要

主要な経営指標等の推移

過去5年間の売上、利益、自己資本比率、株価収益率(PER)、総資産等の重要な経営指標の推移の記載があります。

自己資本比率とは持っている全ての資産に対して現金含む自己所有の資産(純資産)の割合を示したものです。高ければ高いほど良い数値ではありますが、一般的に40%以上であれば健全で倒産しにくいと言われています。

ファーストリテイリングは2020年8月期において自己資本比率は50%あり、非常に健全な会社だと分かります。

株価収益率とはPER(Price Earnings Ratio)の略で時価総額を純利益で割った数値です。主に株式投資する際の指標として使われ、日本株式市場においては平均PERは13%。ファーストリテイリングは 103.5倍と、当時は非常に期待されていた事がよくわかります。

沿革

沿革は企業の歴史が時系列に分かりやすく纏められています。

ファーストリテイリングは山口県宇部市が創業の地と知っている人は何人いるでしょうか?そういった企業の生い立ちや発展の歴史が分かるのも見ていて面白い発見があります。

今では東証一部の日本を代表する企業であるファーストリテイリングですが、最初は1994年7月に広島証券取引所(2000年3月に廃止)に上場したのが最初でした。

こんな風に色々な役に立つ?豆知識が身に付きます。特にお客さんだったり、就職・転職活動する際はその会社の歴史を知るためにも必ず見ていた方がいいと思います。

事業の内容

連結子会社含むグループ会社がどういった事業を行っているのか詳細が記載あります。

ファーストリテイリングの事業は主に以下5つのセグメントで構成されています。

  1. 国内ユニクロ事業
  2. 海外ユニクロ事業
  3. ジーユー事業
  4. グローバルブランド事業(Theory、プラステ、J Brand等)
  5. その他

「GU」もファーストリテイリンググループだと知っている人も多いと思います。

関連会社の状況

連結子会社の名称、登記住所、出資金、主な事業の内容、議決権の所有割合が記載あります。議決権の所有割合とは出資比率のことです。海外子会社は現地の有力企業と合弁会社を作ったりしていることもあり、その場合は出資比率が100%以下になります。

ファーストリテイリングでいうと、韓国、ベトナム、タイ、インドネシアの子会社は100%以下のようです。

従業員の状況

連結会社の従業員数の詳細が分かります。ファーストリテイリングは2020年8月末時点で57,000人を超える巨大企業だと分かります。海外の従業員が32,000以上と半分以上が海外事業に関わるグローバル企業、世界のユニクロ!という事がよく分かります。

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2. 事業の概況

事業の状況

現在の事業の状況について記載があります。

ファーストリテイリングの場合は世界No.1のアパレル情報製造小売業を目指すべく、コロナウイルスの対策や有明プロジェクト、国内外のユニクロブランドの更なる拡大の為の施策を進めている等、外部環境含む事業の状況が詳しく分かります。

事業等のリスク

ここでは企業が今抱えている事業等のリスクについて赤裸々に教えてくれます。普通はリスクは人さまへさらけ出したく無い所ですが、上場企業ではガラス張り経営なので、抱えている課題と、その具体的な対処策等についても知ることができます。

ファーストリテイリングの場合はグローバルに展開していると必ず発生する為替リスクや、カリスマ経営者/柳井会長含む経営陣に万が一があった際のリスク等について記載があります。

財政情勢、経営成績およびキャッシュフローの状況の分析

ここでは業績の状況及び、事業セグメント毎の業況が分かります。

ファーストリテイリングの例で言うと、国内事業、海外事業、ジーユー事業、グローバルブランド事業等に分かれて詳しく記載があります。

部門別の売上を見ると、既に海外事業が国内事業の売上を上回っている事だったり、ユニクロ事業は前年比売上を伸ばしているのに対し、ジーユー事業は売上が前年よりも下がっている事など、事業部毎の好不調がよく分かります。

3. 設備の状況

設備投資等の概要

ここでは設備投資の状況について詳しく知ることができます。設備投資とは製造業であれば新しい機械の購入や工場の建設など。小売店であればお店の新規出店などです。

どこの事業の設備投資に積極的にお金を投じているのかに注目です。

ファーストリテイリングにおいては国内ユニクロ事業で32店舗出店、海外ユニクロ事業で101店舗出店、ジーユー事業で35店舗出店しています。ジーユーと合わせても海外の出店数が多いのが今のユニクロ事業なのだと分かります。

主要な設備の状況

会社の所有・賃借している主要な設備の状況や帳簿簿価(会計上の資産・負債の評価額)について知ることが出来ます。

ファーストリテイリングの例で言うと、事業会社毎に投下資本(とうかしほん:事業活動を行う時に使用している資産)の内訳が記載されています。国内ではユニクロ事業へ人もお金も一番多く投資されています。

設備の新設、除却等の計画

ここでは主要な設備の新設、拡充、売却等の計画が詳しく載っています。どんな設備投資を計画しているのか、資金調達はどうするのか(銀行調達、増資など)をチェックします。

ファーストリテイリングは国内ユニクロ事業30店舗に留まる一方、海外ユニクロ事業154店舗と海外での出店に意欲的というのがよく分かります。

投資資金は自己資金、銀行借入、社債にてまかなう予定のようです。

4. 提出会社の状況

株式等の状況

ここでは発行可能株式総数や大株主の状況が分かります。金融機関、外国法人、個人といった複数の株主に上場企業の株式は持たれていますが、具体的にどういう株主が多いのかはチェック必要です。

ファーストリテイリングの場合、2020年8月時点で一番多いのが個人その他で37%。これは筆頭株主の柳井会長が21%株式を保有している事が主な要因。2番目が金融機関34%、外国法人18%と続きます。

ちなみに株主Top10が見れるのですが、うち柳井一族4名入っており33%の株式を保有されています。

配当政策

名前のとおり、配当の方針及び1株あたりの配当金額が分かります。

ファーストリテイリングは2020年8月期の1株当たりの配当金額は中間配当240円、期末配当240円の合計480円でした。柳井会長の保有株式数が22百万株あるので配当だけで105億円というとんでもない配当額には驚きです。

役員の状況

ここでは役員の経歴及び保有株式について知ることが出来ます。企業の役員は企業運営、ガバナンス(企業統制)と意思決定事項が多岐にわたる為、投資する際にはどういった人が役員を務めているのかを知るのは非常に重要です。

ファーストリテイリングの役員は柳井会長を筆頭に、ゴールドマンサックス、マッキンゼーといった超一流コンサル会社出身の方や、日本オラクル、大和ハウスのトップを務められた方など、非常に多岐に渡るプロ経営者の役員が多い印象です。

社内取締役は4名、社外取締役は5名とバランスよく、意思決定する取締役会で色々な意見を交えて物事が決まっているだろうと予想できます。柳井会長のイメージが強いですが、社外取締役の数が社内よりも多いので屈託なく意見出来る人をしっかりと集めている印象です。

5. 経理の状況

連結財務諸表等

企業の財務状況を知る上で大切な3つの表について詳細知ることが出来ます。

  1. 貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
  2. 損益計算書(そんえきけいさんしょ)
  3. キャッシュフロー計算書

貸借対照表はその時点での会社の財務体質が分かります。借入が多すぎないか、資金をどこへ投資しているのか(工場、機械購入など)等。人間で言うと健康診断結果のようなもので健全化かどうかが分かります。

損益計算書はその1年の売上、利益が分かります。こちらはなじみがあると思います。売上何%増加、利益最高益等、新聞やニュースでよく見たり聞いたりする事あると思います。

キャッシュフロー計算書は主に3つ。営業キャッシュフロー、財務キャッシュフロー、投資キャッシュフローについて。詳細はまた別途纏めたいと思います。

まとめ

今回のまとめ!

今回は少しとっつきにくい有価証券報告書について、皆さんご存じのユニクロことファーストリテイリング社を参考に各重要項目について纏めてみました。

改めてファーストリテイリングが超超超優良企業だと再認識しました。ブログを書いている2021年6月12日時点で時価総額8兆7510億円、時価総額ランキングNo.8と正に日本を代表する巨大企業です。本当にいい製品が多く、日常生活でも大変お世話になっています。

強さの秘密だけでなく、より成長するための課題や、抱えている問題とその対応策等、その企業をより深く知るためのヒントが沢山詰まった有価証券報告書

興味ある会社、投資をしてみたい会社、家族や友人で上場企業に勤めている会社等、何でもいいので少しでも知っている上場企業があれば是非、上記を参考に有価証券報告書を見て下さい。きっと今まで知らなかった情報が得られると思います!

 

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ABOUT ME
みるきぃ
東証1部企業に勤めるサラリーマン。 倹約が得意でコツコツ資金を増やしアッパーマス層に突入。 自身の経験を活かし、経済やお金の情報、お役立ち情報などを発信しています。 FP2級保有。米国・英国への留学経験あり。5年程中国・台湾で仕事もしていました。