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【書籍紹介】大東建託内幕 フィクションだと信じたいブラックさ

連続して書籍紹介が続いていますが、何せ面白かったので紹介させて下さい(笑)ふらっと立ち寄ったブックオフでつい手に取って読み止まらなくなり結局購入した本紹介です。

大東建託と言えば、いい部屋ネットのCMでお馴染みの大手不動産会社。賃貸住宅の管理戸数では業界No.1。東証プライム(旧:東証一部)上場企業、売上1.5兆円、経常利益900億円(2021年12月期)と、知名度だけでなく売上・利益も凄い会社。

2021年3月期|土地活用のことなら – 大東建託 (kentaku.co.jp)

主に自社が建築した賃貸住宅の居室を地主等のアパートオーナーから借り上げ、入居者募集や建物管理を引き受け、その物件から得られる一定収入をオーナーへ支払う、「収益保証型の一括借り上げ(サブリース)」を前面に押し出し規模を拡大してきた会社です。

本書はその大東建託の表には出ない闇の部分を、元社員等からのインタビューにより明るみにしていきます。エグイ内容が多い為、詳細は個々人で本書を読んで頂くとして、今回は興味深かった点、及び不動産業界の今後の未来について書いてみたいと思います。

使い捨てられる社員たち

不動産業界は長時間労働だったり、ノルマがきつい事で世間一般には知られています。一方、金額が大きい商材だけに営業成績が良かった時の給与・ボーナスが破格だったりと実力社会で成り上がる事が出来る魅力も持ち合わせていると思います。

但し、本書の著者である三宅氏の取材や、元社員含む様々な人へのインタビューから見えてくる実情は同じ営業マンとして想像を絶する大変さでした。

毎日15時間超えの労働

朝8時から深夜まで、毎日15時間長期間労働。子供が誕生しても顔を見るのもままならない。これは自殺で亡くなった大東建託の社員の遺族の言葉。

(一日の流れ)

  • 午前7時前に起床、日報を書いて朝食抜きで出勤
  • 支店に着くとまず朝の会議。飛び込み営業する地域を打ち合わせ
  • 会議を終えた後、車に分乗し支店を出発。営業予定地で一斉に車を降り徒歩で営業開始
  • 午後は個人行動。心当たりのある地主の所へ営業
  • 当てがないと引き続き飛び込み営業。称して「終日訪問」
  • 少しでも脈がありそうな地主には猛烈営業し勧誘
  • 夜になっても仕事は終わらない。夜8時半に支店で終礼
  • 翌朝の会議に備えて日報作成
  • 早くて午後11時、遅ければ午前1時か2時に帰宅
  • 疲労困憊で次の日もある為、帰ったままの格好で寝る事もしばしば・・・

上記は建築営業と呼ばれる職種。大東建託の中でも一番過酷な職場、たいてい1年以内で辞めてしまう、3年いればベテラン、との事。

僕も営業なので、繁忙期はこれ位のスケジュールになる事も稀にありますが、日常的にこの生活では心身共に余裕を持ち、普通の生活を送るのは困難かと思われます。

歩合制の落とし穴

社員の平均年間給与は783万円と高額(ヤフーファイナンス調べ)しかし、誰しもが高いとは限らない。

歩合給の為、業績に応じ給与は大きく乱高下する。固定給は月額28万円程。これに加え契約を取って完工した場合に契約金額の1.5-3%が歩合給として払われる仕組み。契約・完工が続けば収入は上がるが、それが無ければ減給制度もあり収入は激減する。

融資の見通しが立たないうちから次々に契約を取るのがある営業支店のやり方だった。順調に融資がついて竣工すればよいが、融資不調で解約になる事もある。解約になると初期費用(受注金30万円等)を顧客が被る。こうした費用を顧客に代わって払う事もあるという。

成績がそのまま給与に跳ね返ってくるのが歩合給の良い所だが、本来負担するべきではない費用の分までも、無理やり案件化する事で、案件ロストとなった際に社員自身に跳ね返り借金をしてお金を工面している社員も多いのだという。

殺されても放すな

これは朝礼にて社員全員で唱和するという「大東鬼10則」のうちの一つ。広告代理店最大手・電通に伝わる有名なスローガンをそのまま使ったもの。

朝礼当番の営業担当社員が大声で読み上げて、他の社員が続いて唱和する。

  • ひとつ、仕事は自ら「創る」べきで与えられるべきでない
  • ふたつ、仕事とは先手先手と「働き掛け」ていく事で受け身でやるものではない
  • みっつ、取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは

といった具合。もちろん大声、声が小さいと「やり直し!」と支店長のゲキが飛ぶ。

 

体育会系の会社ではあるあるなのかもですが、いつの時代だ・・・と感じます。子供が親の職場を見に行く、みたいなのがあっても絶対に入らせたくない職場

朦朧としたまま出勤する毎日

上記で述べた通り、毎日が激務。それに加え上司の詰めも尋常ではない。

(ある夜の出来事)

  • 午後10時頃。営業所に所長と課長と私の3人が残っていた
  • クタクタに疲れた体でいつものように仕事をしていた
  • 突然、課長が怒鳴り始めた
  • 「(仕事の)スピードが遅い!○○はどうなっているんだ!○○の件はどうなんだ!」と
  • 言うだけ言って帰っていった
  • この営業マンはこの時何かがふっきれた。
  • 「ああ・・・もういいや」という気持ちになり、しばらく机に突っ伏した
  • 動けなくなった。何のために働いているんだと考え、明日から会社に行かないと決めた

この方は、入社10年目にしてはじめて有給休暇を使った。そしてそのまま退職されたとの事。

仕事が激務でしんどくても、上司・同僚との関係が良ければ人間頑張れるもの。しかしその人間関係さえも上記の通りでは、常人の精神ではやっていけない。その会社で所長、課長になっている人は常人を超えた精神の持ち主なのだろう。

闇金の返済に苦しむ

じつはクビになるだけならまだマシな方で、一歩誤ると刑務所に行きかねない「危険な」職場であると著者は取材を通して感じたという。

ある営業社員は好成績を挙げていたが、実は契約金などを立て替えているうちに借金がかさみ、闇金融の返済に苦しんでいたという。そしてある日、上司の免許証を使って銀行のカードローンを申し込もうとしたところ、なりすましが発覚して警察に逮捕された。

この逮捕された社員は著者の「なぜそんな事をしたのか」の質問に対して、「契約取って完工すれば何百万円というインセンティブ(歩合給)が貰えるので、そんなに罪悪感はありませんでした」と答えたという。「たぶん上司も「大したことじゃない」と考えていたのではないか、それ程金銭感覚が麻痺していた。」

仕事を取る為に、自ら借金して闇金に手を染める。本末転倒な気がして仕方がないが、目の前の美味しそうなニンジンを見せられたら、ニンジン欲しさに悪に簡単に手を染めてしまう。

これらはあくまで一部の社員に限ると信じたいが、複数人の社員の話を聞くと少なくない人数が、かなりつらい労働環境で働いていたのだと思った。

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オーナー(家主)の夢と現実

オーナー(家主)は、元々の地主のお金持ちが多いと思いきや、本書に出てくるオーナーはかた田舎で農業をしていたおじさんや、教師を退職した女性等、そもそもビジネス自体にあまり明るくないオーナーも多く登場します。

ではエグイ話を少しピックアップして記載します。

田んぼの中に8,700万越えアパート計画

水田に囲まれた400坪の土地は、地元の人が普通に考えれば「アパート経営」に向いた場所ではない。だがその不安を打ち消すように大東建託のA課長は推し進める。

落ち着いて考える余裕はなく、強引に流されていき、気づくと契約書に署名・捺印していた。総事業費は1億円に達した。

融資未決定のまま着工

上記につき、契約したものの、融資が下りるかの心配があった地主。再三にわたり質問するも、「大丈夫」の一点張りで詳しい説明はない。そうこうしていると突然A課長が訪問して、当初想定していた着工金の増額請求や、借入金利が上がる旨を伝えられたという。

高額な商品を扱うにはそぐわない、不誠実な対応。こんな案件ばかりではないと信じたいが、自己責任というには重すぎる。

通帳だけ見ていればいい

「すぐに部屋は埋まる。空室率は3%程度です」、「通帳だけ見ていればいいんですよ」と甘い言葉で地主を安心させる。

家賃額は30年間一定と大きく書かれていた。しかし注釈でその試算表に小さく書かれた、「各種収益・費用等の金額は、現在の賃料相場、税制に基づき試算したものであり、その金額を継続保証するものではありません」の文字には気づかなかった。

金融業界でもよくある光景。注意事項は書いてあるが契約書をよく読まないと気づかない。

でも今はコンプライアンス強化により、メリットだけでなくデメリットについてもキチンと説明が必要。そんなの聞いていない、知らなかったではリカバリー効かない金額が動いているので、買う側もしっかり契約書や提案書の詳細の確認・理解が必要。

 

読んでみての結論は、騙す方も悪いが騙される方も悪い。但し本書に出てくる営業マンのやり方は本当だとすると、明らかに詐欺と同じ手口でお客さんを騙していたり、事実を隠蔽していたりと悪質なケースが多い

自分を守る為にも、知識は勿論、自分一人で判断せず、身近な人に相談出来る人を作っておく環境づくりが大切だと思いました。

【書籍紹介】 サイコロジー・オブ・マネー 世界絶賛のお金の本 – みるきぃ 身近な投資のおはなし (milky-happylife.com)

実は大東建託だけじゃない!?不動産業界の闇

自分自身の仕事が金融関連の為、不動産関連の仕事の取引先や知人は何人もいます。全部がそうではないけれど、業界全体として旧態依然の組織感が拭えない印象

特に上記でも書いた不動産の営業は歩合制で自分の給与が決まる為、ある意味「売ったもの勝ち」の意識で仕事をしている人間も少なくありません。

前述の通り、概して不動産は数ある商売の中でも、金額が非常に大きく、沢山のお金が動きます。それがいい所でもあり、非常に怖い所。

 

また大東建託は勿論、これら不動産大手企業はマスメディアの大事なスポンサーになっているケースが多く、メディアも上記のような事実が仮にあったとしても、スポンサーを辞められたら自分たちの首も締まってしまう為、大々的にニュースで取り扱い出来ないのではないかと推測します。

そんな闇を明るく、面白く語ってくれるYOUTUBEチャンネルは貴重なメディアだと思います(笑)。再現VTRもあり、外から見ている分には面白いですが、中にいると思うと・・・恐ろしい。

 

また、同業のオープンハウスの会も面白かったので是非ご覧下さい。(ちなみに本動画は続編あり、パート3まで続きます)

日本における今後の不動産投資の未来

日本は遠くない未来、超高齢化社会に突入します。これから日本の人口は間違いなく右肩下がりが続きます

内閣府の推計では、2050年に日本の人口は1億人を割り込み、うち半分近くが60歳以上の高齢者となる見込み。

第1章 第1節 1 (2)将来推計人口でみる50年後の日本|平成24年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府 (cao.go.jp)

 

アメリカのような移民を受け入れる議論は出ているものの、日本人自身がそれを良しとしないだろうし、残念ながら移民政策は上手くいかないと個人的には思います。

日本の文化は外国人から見ると独特過ぎて、多くの外国人は馴染むのは難しいと思います。日本人でも難しいと思う所が多々あるのに、外国人では尚更です。

こういった日本の未来を考えた時、無理やりに地方へマンションを乱立するのは、将来空室だらけになる未来が目に見えています。

本書に書いてあるのが事実でないと信じたいが、地主自身も自分で事業計画を理解し、契約書も隅々まで目を通し、未来予測もしっかりした上で投資判断が必要だと思います。

僕としては、田舎の実家に帰って親に大東建託ほか、不動産会社からの勧誘には一切耳を貸さない事、しつこく言い寄られたら必ず相談するように伝えるつもりです。

ご自身だけでなく、ご家族、親戚がもし大東建託含む不動産会社からの営業があった場合は、毅然な態度で対応しましょう!世の中美味しい話には必ず裏があります。


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みるきぃ
東証1部企業に勤めるサラリーマン。 倹約が得意でコツコツ資金を増やしアッパーマス層に突入。 自身の経験を活かし、経済やお金の情報、お役立ち情報などを発信しています。 FP2級保有。米国・英国への留学経験あり。5年程中国・台湾で仕事もしていました。